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葉緑体:構造と色素組成の多様性

葉緑体の系統と単系統性

葉緑体やミトコンドリアが共生起源であることは確かで,しかも光合成能は複数の系統で独立に獲得されたことが明らかですから,葉緑体の系統と細胞本体の系統を別に考える必要があります。葉緑体は知られている限り単系統と考えられます。つまり,原核の藍藻のひとつが共生して葉緑体が成立したのは1回だけで,それ以外の葉緑体の獲得はすべて真核藻類の共生(二次共生または三次共生によるものと考えられています。クリプト藻やクロララクニオン藻類にみられるヌクレオモルフやペリプラスチダルコンパートメントの存在は真核藻類の共生による葉緑体の獲得によって説明されます。細胞共生による真核生物の多様化

葉緑体は単系統であるにもかかわらず,藻類の高次の分類群によってさまざまな性質を持つように至っています。


藻類の大部分は名前に色の名前を冠しています。藍藻,紅藻,褐藻そして緑藻などです。黄金色藻,黄緑色藻などもそうです。これは藻類の比較的大きなまとまり(綱や門の階級)で,色調がほぼ一定であることによります。

藻体の色調の違いは光合成色素の組成の違いに基づいており,その組成は分類群によって異なっています。さらに,分類群が異なると,葉緑体のもつさまざまな形態的性質が異なっています。ラメラを構成するチラコイドの数,フィコビリソームの有無,ガードルラメラの有無,葉緑体を包む膜の有無とその数,ペリプラスチダルコンパートメントの有無,ペリプラスチダルコンパートメントにおけるリボソームやヌクレオモルフの有無などです。葉緑体の諸性質は藻類の門や綱を特徴づける最も重要な形質のひとつです。


光合成色素

クロロフィル

カロチノイド

黄色,橙色,赤色などの色をした色素で水に不溶,

カロチンは炭化水素で,最も普通に存在するβ-カロチンは次の構造である。

キサントフィルはカロチノイドのうち水酸基,カルボニル基などの形で酸素を含む一群で,光合成の補助色素としてさまざまなものが知られている。代表的なキサントフィルとしてフコキサンチン,ビオラキサンチン,ネオキサンチンなどがある。

フィコビリン

ここでは以下の9つのグループに分けて記してあります。クリックしてください。

原核藻類の光合成装置
灰色植物のシアネレは葉緑体か
紅色植物:藍藻に似たもうひとつの葉緑体
クリプト藻:フィコビリンをもち,フィコビリソームをもたない葉緑体:紅藻に由来するの葉緑体
ストラメノパイルとハプト藻:クロロフィルcとフコキサンチンをもつ葉緑体
渦鞭毛藻:クロロフィルcとペリディニンをもつ葉緑体
クロロフィルa・b
をもつ葉緑体
緑色植物
ユーグレナ植物:3枚の包膜をもつ葉緑体
クロララクニオン植物:緑のクリプト藻?の葉緑体