[はじめに][植物と藻類][酸素発生型光合成と藻類][五界説と藻類][細胞共生による真核生物の多様化][八界説と藻類][藻類の分類と系統][分類形質と分類系][真核生物の系統と藻類の占める位置][クラウン生物群][藻類を含む新たな真核生物群][ユーグレノゾア][ストラメノパイル][アルベオラータ]
藻類をふくむ新たな真核生物群の認識


現在最もよく受け入れられている5界説では,真核生物のなかに動物や菌類,緑色の植物という三つの大きな,しかもよくまとまった分類群が認識され,界の階級で扱われています。しかし,細胞の微細構造のデータの蓄積と分子系統の研究から,これらの大系統群にも匹敵する生物群が真核生物のなかに存在していることがわかってきました。
酸素発生型光合成が複数の真核生物の系統で獲得されたこと(真核生物の系統と藻類の占める位置の項を参照),そして真核光合成生物の多様性をもたらしたしくみが細胞共生であったことが認識されるにつれて,真核生物では従属栄養を行う生物と光合成を行う生物が一つの系統群を形成することがごく当たり前のこととして認められるようになってきました。この視点で真核生物をながめると,驚くべき生物群の存在が明らかになってきます。

現在,次の生物群が藻類を含む新たな真核生物群として認められつつあります。

藻類を含む真核生物の三つの仲間
ユーグレノゾア
(EUGLENOZOA)
ユーグレナ植物とキネトプラスト類を含む仲間
ストラメノパイル
(STRAMENOPILES)
黄色植物,鞭毛菌,ビコソエカ類を含む仲間
アルベオラータ
(ALVEOLATA)
渦鞭毛植物,アピコンプレクサ類,繊毛虫類を含む仲間

これらはいずれも藻類を含んでいますが,その他に従来全く異なる生物群と考えられていた原生生物が含まれています。これまでの藻類や原生生物,原生動物の概念をくつがえす驚くべき生物群です。真核生物の世界はこれまで考えられていたよりはるかに複雑なもののようです。