プラシノ藻の画像データ


プラシノ藻は単細胞の緑色植物からなる分類群で,一般に以下の性質で特徴づけられる。

鞭毛は細胞の窪み(flagellar pitとよばれる)から生じる。
鞭毛は多くの緑色藻類と異なり,先端は先細り(hair point)にならず,ひも状(truncate)である。
鞭毛の表面にはゴルジ体で形成される鱗片が規則正しく配列されている。
ほとんどの種は細胞の表面も鱗片(scales)で被われる。


プラシノ藻では,属が異なると,鞭毛の長さ,遊泳の方向,鞭毛運動の性質,光合成色素組成などに違いがみられる。このような性質は他の緑色植物では高次分類群で安定である。プラシノ藻でこのような基本的性質に多様性が認められることは,1) プラシノ藻が緑色植物の祖先生物群であるために緑色植物の初期進化で出現したさまざまな性質を残していること,あるいは,2) プラシノ藻が単系統ではなく,起源の異なる複数の生物群の集まりであることを示唆している。

プラシノ藻は緑色植物の初期進化を探る上で極めて重要な生物群と考えられる。プラシノ藻の系統が明らかになれば,緑色植物の分類のかなりの部分が理解されると思われます。

図 プラシノ藻のいろいろ


鞭毛装置

プラシノ藻の多様性は鞭毛装置にも表れている。他の緑色植物(緑藻,アオサ藻,シャジク藻)の鞭毛装置がそれぞれほぼ一様であることに対して,プラシノ藻では鞭毛装置も多様性に富んでいる。
なかでも,Mesostigma, Halosphaera, Pterospermaなどの属では,交叉型の鞭毛根とともに,1dの鞭毛根に多層構造体(MLS)が付随しており,緑藻・アオサ藻群(交叉型鞭毛根で特徴づけられる)とシャジク藻・陸上植物群(多層構造体の存在で特徴づけられる)の双方の性質を合わせ持っている。


鱗片 (scales)

ほとんどのプラシノ藻の細胞と鞭毛は鱗片(scale)で被われている。鱗片はゴルジ体で形成され,鞭毛の基部から細胞外に放出される。鱗片の形態は属や種で一定で,プラシノ藻を同定する分類形質となっている。

Mesostigma(細胞と鞭毛表面は鱗片に被われている)
Nephroselmisの細胞表面  


鱗片とプラシノ藻の鞭毛

鞭毛鱗片(flagellar scales)には鞭毛表面を層をなして密に被う鱗片と,両側に列をなす毛状鱗片(hair scale)がある。最下層のダイアモンド鱗片は直径約40nmの4または5角形の鱗片で,マミエラ目以外のすべてのプラシノ藻に存在する。ダイアモンド鱗片のは分類群によって異なる形態(たとえばピラミモナス目ではカブトガニの形)の鱗片で被われている。Nephroselmisではさらに3層目,4層目の鱗片が知られている。

これらの鱗片は鞭毛上で特定のパターンで配置されている。毛状鱗片は鞭毛の有効打(effective stroke)の向きに対して直角の方向に伸びており,鞭毛の推進力の増加に寄与していると考えられる。9つの2連管のうちの一つはダイニン外腕を欠いている。この2連管を1番と名づけ,鞭毛先端からみて反時計回りに番号をふることができる。このとき,有効打の方向は6番の方向にあたり,また毛状鱗片は4番と8番の2連管から左右に伸びている。


プラシノ藻の分類

Melkonian (1989の分類系)

Mamiellales
(マミエラ目)
Mamiella, Dolicomastix, Mantoniella, Bathycoccus, Micromonas
Pseudoscourfieldiales
(シュードスコールフィールディア目)
Pseudoscourfieldia, Nephroselmis, Picnococcus
Chlorodendrales
(クロロデンドロン目)
Tetraselmis, Scherffelia
Pyramimonadales
(ピラミモナス目)
Pyramimonas, Cymbomonas, Pterosperma, Pachysphaera, Halosphaera, Mesostigma*


*Mesostigma 属は他のプラシノ藻のいずれともかけ離れた系統上の位置を占めるらしい。緑藻・アオサ藻類だけでなくシャジクモ藻綱・陸上植物全体の祖先生物である可能性も示唆されている。