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ショウジョウバエ成虫肢における遠近軸方向の形態形成について

小嶋徹也、西郷薫

(東大・理・生化)


 ショウジョウバエ成虫の肢は、遠近軸方向に幾つかの節から構成されており、肢原基から分化する。肢原基では同心円状に遠近軸情報が存在すると考えられ、同心円状に発現する遺伝子は遠近軸方向の形態形成に重要であると考えられる。ホメオボックス遺伝子対BarH1/BarH2(Bar)は3齢幼虫初期に肢原基がまだ平面的な時に将来の第3−第5附節領域で円環状に発現し、そのすぐ外側で第2附節と第3附節の間のfoldingが起こる。ステージが進むとBarの発現は、将来の第5附節で強く、第4附節で弱く、第3附節では発現しないといったパターンに変化する。 Bar-やBarを異所発現させた肢原基の解析から、 BarはBar領域のすぐ外側の細胞に第2−第3附節間のfoldingを起こさせること及び後期のBarの発現の強弱により、第3−第5のそれぞれの附節が決定されること、更に、 Bar領域のすぐ内側の細胞でのFas IIの発現の誘導及びその細胞形態の制御をしていることが示唆された。また、Barのすぐ内側、将来の先附節領域ではホメオボックス遺伝子aristaless (al)が発現している。両者共に3齢幼虫初期に発現が始まるが、その時は両者の発現領域には重なりがみられる。しかしステージが進むと、その発現領域は完全に分離する。 Bar-の肢原基やBarを異所発現させた肢原基の解析から、この発現領域の分離は少なくともBarがalの発現を抑制することによっていることが示唆された。これらのことから、Barは、遠近軸情報によって大まかに決められた領域の微調整をし、Bar発現領域及びそれに隣接する領域の運命決定をしていると考えられる。