P-2


細胞膜プロテオグリカンDallyのDppシグナル系における機能

中藤博志1、杉浦資子1、泉 進1、Shari Jackson2、Scott Selleck2

(1: 都立大・理・生物、2: アリゾナ大・分子細胞生物学)


 初期胚や成虫原基の発生においてHedgehog (Hh)、Decapentaplegic (Dpp)、Wingless(Wg) といった分泌性シグナル分子は、細胞分化、体軸の決定、パターン形成に重要な機能を果たす。これらシグナル因子の多くは、分泌された後、細胞膜や細胞外基質に分布すること、精製標品単独では活性を持たないこと、in vitro でヘパリンに結合することなどから、細胞膜表面や細胞外基質に存在するヘパラン硫酸プロテオグリカン(HSPG)がシグナルの伝達に関与することが示唆されてきた。division abnormally delayed (dally) 遺伝子は細胞膜結合型 HSPG のコアタンパク質をコードしている。dally 変異体では幼虫中枢神経系の特定の神経芽細胞群の分裂周期の進行が異常となる他、翅、複眼、触角、外部生殖器などの成虫の形態に異常をきたす。今回、dally 遺伝子がDppシグナル系で機能している可能性を検討するため両遺伝子の遺伝学的相互作用を解析した。その結果、1)dpp機能減少型突然変異はdally表現型を増強する、2)dpp遺伝子のコピー数を増やすとdally表現型は抑制される、3)dpp異所的発現により生じる形態異常がdally突然変異により抑えられる、4)dally突然変異体ではdppシグナル系下流因子の発現が著しく減少する、5)dally異所的発現により、dppのパターン形成能が増大すること、などが判明した。以上の観察から、ヘパラン硫酸プロテオグリカンDally分子は細胞膜表面においてDpp補受容体として機能し、そのシグナル量を調節していると考えられる。