P-3


Drosophilaプレセニリンホモログのクローニングならびにその発現解析

前田美慈1,2、高橋邦明1,3、高島明彦1、石和貞男2、山元大輔1

(1: 三菱化学生命科学研究所、2: お茶大・理・生物、3: 九大・理・生物)


 アルツハイマー病はヒトにおける痴呆の主たる原因の一つであるが、その症例のほぼ10%は遺伝性である。近年、この原因遺伝子の一つとして、7回膜貫通型タンパク質をコードするプレセニリン(PS)1および2が同定された。アルツハイマー病患者の持つPS1変異型遺伝子産物は、老人斑の要因となるアミロイドβタンパク質由来Aβ42ペプチドを増加させることが報告されているが、その機構の詳細については確定していない。さらに、線虫のNotch/LIN12の変異を抑制する遺伝子、sel-12が、ヒトPSと高い相同性を持つことも明らかとなった。そこで我々は、Notch下流因子が多数同定されており、かつ行動学的解析を行うことのできるDrosophilaを用いて、PSの機能を解析するため、Drosophila プレセニリン遺伝子(DPS)のクローニングをおこなった。

 cDNAクローニングの結果から、DPS遺伝子には2つのスプライシングパターンが存在し、それぞれ、541,527アミノ酸からなるタンパク質をコードし、ヒト、線虫のPS1とそれぞれアミノ酸レベルで55.7%, 46.5%の相同性を有していた。また、得られたcDNAを用いた唾腺染色体上のマッピングから、DPS遺伝子は77Bに存在することが明かとなった。さらに、Northern blot法および in situ hybridization法による発現パターンの解析から、DPS遺伝子は初期胚で強く発現し、その後蛹期まで発現が続くことが判明した。現在、DPSの機能を解析するため、DPS変異体のスクリーニングならびにtransformantの作製をおこなっている。