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幼虫神経系形成過程および付属肢形成過程における poxn 遺伝子の新たな機能

木村賢一1、粟崎健2

(1: 北教大・岩見沢・生物、2: 国立精神神経センター・遺伝子工学)


 poxn 遺伝子は、pairedドメインをもつ転写制御因子をコードしており、機械感覚器(mono-innervated external sensory (m-es) organs)と化学感覚器(poly-innervated sensory (p-es) organs)の発生運命の選択に関与することが知られている。我々は、poxn 遺伝子のloss-of-function突然変異体を分離し、その異常を調査した結果、2つの発生過程における新たなpoxn 遺伝子の機能を見いだした。(1) 胚および幼虫の周辺神経系において、poxn 突然変異体では「p-esがm-es」に転換し、さらに2令および3令幼虫の感覚器では全てのtrichome型の感覚器(hair)が、campaniform型の感覚器(papillae)に転換した。Poxnは胚においてはp-esに特異的に発現し、1令および2令幼虫ではhairに付属する細胞で特異的に発現していた。これらは、poxn 遺伝子は、p-esの発生運命の決定のみならず、幼虫脱皮に伴って起こるhairの再形成にも関与していることを示唆している。(2) poxn 突然変異体では、肢のtarsus及び触角の相同部分に異常がみられた。野生型のtarsusは5つの節よりなるが、突然変異体では3節しか見られず、2つのジョイントに形成不全が生じている。また、触角および肢の成虫原基の対応する部分に2重のリング状にPoxnの発現が認められた。これらのことは、poxn 遺伝子は肢や触角のパターン形成に関与することを示唆している。