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突然変異アクチンの精製と in vitro motility assay

最上要1、Azam Razzaq2、Samantha Clark2、John C. Sparrow2

(1: 東大大学院・理学系研究科、2: Dept. of Biology, Univ. of York, UK)


ショウジョウバエは6つのアクチン遺伝子を持つが、唾腺染色体上88Fにあるもののみが、成虫間接飛翔筋において発現し、他のアクチン遺伝子はこの筋肉では発現していない。我々は飛翔不能突然変異を単離することによって得た88Fアクチン突然変異の中、17系統から変異アクチンの精製を試み、得られたものについてin vitro motility assayを行った。アクチンを精製するためには、まず10ないし20匹の麻酔したハエ成虫より間接飛翔筋を切り出す。ホモジェナイズ後、アセトンパウダーを作成、アクチンを抽出後、ファロイジン存在下で重合させ、超遠心機にかけてF-アクチンとして回収した。この方法で正常個体10匹から約5μgのアクチンが得られる。突然変異のうち8系統(Q121@、Q353@、W356@、G63D、G156S、G156D、G301D、G366S)からはF-アクチンが得られなかったが、これは予想される構造の変化、あるいは過去のデータより妥当と思われる。残りの9系統についてはウサギHMMに対しmotility assayを行ったところ5系統(G302D、P307L、V103E、G268D、R28C)は正常アクチンの滑り速度とほぼ同様であった。これに対しE226K、R95Cは正常よりわずかに遅く、さらにE57Kでは滑り速度は正常の半分程度に減少しており、またI289Fはほとんど滑りを示さなかった。アルギニン95はアクチン・ミオシンの弱い相互作用があるとされる部位である。グルタミン酸57とイソロイシン289の位置は既知のアクチン・ミオシン相互作用部位とは異なっており、どちらかといえば重合に関与する部位に近い。滑らかな運動を生じるためにはアクチンモノマー間の適切な結合あるいは相互作用が必要なことを示唆しているものと思われる。