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キイロショウジョウバエの全身麻酔に関係する遺伝子群の解析

田中良晴、石井秀紀、市成寿、稲岡美奈子、欅谷大、百々克行、阪上起世、発田郁子、蒲生寿美子

(大阪府大・総合・自然環境)


 W. T. G. Mortonがジエチルエーテルを全身麻酔薬として外科手術に用いてから150年も経つ。その作用メカニズムに関し多くの説が出されてきたがその作用サイトは不明である。最近K[+] channel, Ca[2+] channel, GABA[A] receptorなどのイオンチャネルやPKCなど情報伝達系の酵素への特異的作用を示唆する報告が多くなってきた。我々は全身麻酔に関係する遺伝子群を数多く得て解析することで麻酔薬の作用メカニズムを分子レベルで説明できると考える。

 トランスポゾン(P-element, KP, enhancer trap P-element)の挿入突然変異の中からエーテル麻酔に対し野性型に比べて感受性あるいは抵抗性のものを選び出した。プラスミドレスキュー法およびPCR法によりP因子近傍のDNAをクローニングし、塩基配列決定とホモロジー検索を行った。現在までに 1) Na[+] channel gene, 2) calreticulin gene, 3) 新規遺伝子を同定している。Northern解析で発現量の変化を見ること、復帰突然変異体を得ること、同定した遺伝子以外の染色体を野性型に置き換えることによりこれらがエーテル麻酔に関係するものであることを検証している。またハロセン、イソフルレン等の他の麻酔薬に対する感受性を調べることにより、同定した遺伝子が広い範囲の麻酔薬に関係があるか、麻酔薬の種によって関係する遺伝子が異なるかを調べている。