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キイロショウジョウバエcanoeおよびRas1遺伝子によるcone cellの発生の制御

松尾隆嗣1,2、高橋邦明1,3、近藤俊三1、鈴木えみ子4、山元大輔1,5

(1: 三菱生命研、2: 東大・農、3: 九大・理・生物、4: 東大・医科研・微細形態学、5: 科学技術振興事業団・山元行動進化プロジェクト)


キイロショウジョウバエのcanoe遺伝子座におけるhypomorphicな変異体は、複眼のR7の分化は正常であるが、R7の次に分化するcone cellの数が異常になる。すなわち、canoe[misty1]/canoe[misty1]では正常の4個に対して3個あるいは5個のcone cellを持つ個眼が生じ、canoeについての欠失染色体を用いてさらに遺伝子量を落としたcanoe[misty1]/Df(3R)6-7ではほとんどの個眼でcone cellの数が1〜3個に減る。逆にsevenless promoterにより野生型canoeを強制発現させた形質転換体では個眼あたりのcone cellの数は5〜7個になった。一方sevenless promoterによりconstitutive active型のRas1を強制発現させた個体では個眼あたりのcone cellの数が増加し、同様にdominant negative型のRas1を強制発現させた個体ではcone cellの数が減少する。active型とnegative型どちらのRas1の表現型もcanoe[10B1] (null mutation)によってdominantに強化された。Yeast two hybrid assayでCanoeタンパク質のN末の特定領域とRas1が結合したことにより、CanoeとRas1は直接相互作用すると考えられるが、そのcone cellの分化の制御のメカニズムは単純ではなく、我々はcone cellの分化をnegativeに制御する未同定のカスケードの存在を想定している。