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ショウジョウバエにおける雑種の致死性に関するゲノム解析

吉井基祐、柳生麻実、山本雅敏

(京工繊大・繊維・応用生物)


 D. melanogaster雌とD. simulans 雄から生じる雑種雌は生存するが、雄は3齢幼虫期に致死となる。simulans の Lhr (Lethal hybrid rescue )遺伝子は、この雑種雄を救済する。

 最近melanogaster の第2染色体にDf(2R)Pu-D17などの欠失を用いた場合、その雑種雄にLhr が存在しているにもかかわらず致死となることが明らかになった。このことから、救済遺伝子Lhr が存在していながら雑種が致死となる染色体領域を第2染色体の欠失を用いて調査した。

 系統として入手可能な第2染色体の欠失のほぼすべてを調査した。Df(2)/Cy ♀×Lhr ♂の交配から得られる雑種雄からCy+♂の個体数とCy ♂の個体数の比を求め、雑種生存率の比較を行った。また雑種雄がLhr により救済されない場合、発生過程のどの時期に致死となるかをいくつかの欠失について調査した。

 本研究では欠失によりLhr の救済効果が低下し雑種生存率が0.2以下を示した領域は、21B: 21D, 27C; 28B, 36A: 40B, 44E: 45A, 55A: 55F, 57C; 57D、の6カ所であった。これらの領域はLhr の雑種致死救済効果を抑制するのか、あるいはLhr が救済する致死機構とは別の致死作用を引き起こす原因となるのかもうひとつの救済遺伝子であるHmr との関係について議論する。