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Drosophila auraria complex における雌による選択

都丸雅敏、小熊譲

(筑波大・生物科学系)


 雌による雄の選択(female choice)について,人工的に合成した求愛歌を用いた交配実験を行った.一連の配偶行動の中で,雄は雌にむかって翅を振動させ,音(求愛歌)を雌に伝える.同所的に生息するDrosophila auraria complexの4種の雄の求愛歌のIPI(inter-pulse interval)は種特異的であり,D. biauraria: 13 ms, D. triauraria: 16 ms, D. auraria: 21 ms, D. subauraria: 11 msである.D. biaurariaの雌は別種タイプのIPI(11 ms, 16 ms)の求愛歌があると雄を拒絶し,同種タイプのIPI(13 ms)の求愛歌があると雄を受け入れることから,求愛する雄の受け入れは,IPIに基づき雌が決定すると考えられる.今回,同種と別種の中間の値のIPIの求愛歌に対する雌の反応を詳しく調べることを目的とした.IPIの値を最小1 msの間隔に設定した合成求愛歌を作成し,翅を切除した雄と正常雌のペアにこれを与え,配偶行動を観察した.D. biauraria雌は13 msのIPI(同種タイプ)のとき最も交尾率が高く,求愛雄に対する拒絶数が最も少なくなり,これまでの結果と一致した.また,IPIの値が同種タイプから離れるにつれて交尾率が低下し,拒絶数は増加した.IPIに対する雌の反応(交尾率および拒絶数)は,categorical(ある値のところを境に断続的に反応が変わる)というよりも,むしろcontinuous(連続的)であった.今回は1系統を用いての結果であるので,さらに,広く自然集団からサンプルを得て実験する必要がある.また,D. triauraria雌を用いた実験も行ったので報告する.