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7回膜貫通型カドヘリン分子 CAD47B の軸索束形成における役割の解析

碓井理夫1、平野伸二2、竹市雅俊1、上村匡1

(1: 京大・理・生物物理、2: 南カリフォルニア大・ドヒニ眼研)


我々は、複雑で精緻な神経ネットワークの形成機構を解明するため、神経特異的な細胞間認識分子の機能解析を試みている。選択的な軸索束の形成や標的認識に関わる分子の候補として、神経特異的なカドヘリンスーパーファミリーの新しい分子、CAD47B に注目した。カドヘリンスーパーファミリーの分子は、in vitro での接着活性やダイナミックな発現様式から、生体内での細胞間認識機構に関与していると予想されているからである。構造解析から、ショウジョウバエ CAD47B は7回膜貫通領域を持つ、まったく新しいタイプのカドヘリンスーパーファミリーの分子であることがわかった。最近、ヒトのホモログ分子が同定され、種を越えた分子ファミリーを形成していると考えられる。cad47B の mRNA は、胚発生後期の中枢神経系の多くの細胞で見られたほか、末梢神経系のグリア細胞でも発現していた。抗体染色の結果から、CAD47Bタンパクは、少なくとも軸索に局在していた。生体内での機能解析を目指して、cad47B 突然変異株の分離を試みた。染色体バンド 47B 領域の近傍にマップされる致死変異株のなかから、抗体染色を利用したスクリーニングにより、31 株の突然変異株を分離できた。分子マーカーを用いた解析から、一部の変異株では、中枢神経系の一部の軸索束が分断されたり、特異的な軸索束形成が阻害されるなどの異常を認めた。この結果から、CAD47B は、細胞間認識分子として、軸索―軸索間の相互認識機構に関与していると推測できる。現在、運動神経の走行パターンや末梢のグリア細胞の突起伸長などに注目して、解析を進めている。