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キイロショウジョウバエにおける乾燥耐性遺伝子の探索

栗山美登里1, 都丸雅敏2, 小熊譲2

(1: 筑波大・バイオシステム、2: 筑波大・生物科学)


 キイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)は、高温多湿な熱帯が起源であると考えられているが、現在では乾燥地域を含む世界中に分布している。分布を広げることができた理由の一つとして、キイロショウジョウバエが乾燥耐性を獲得したことが考えられる。しかし、この乾燥耐性がどのような遺伝的、生理的機構によって支配されているのかはまだ明らかにされていない。

 キイロショウジョウバエの乾燥耐性を支配している遺伝子を単離し、分子生物学的な解析を行うことを目的として、P因子の改変型ベクターがゲノムに1コピー挿入されているP因子挿入系統を用い、乾燥感受性突然変異体のスクリーニングを行なった。当研究室で所有されている約1400のP因子挿入系統を順次スクリーニングした。その結果、ほとんどの系統は雌雄とも生存率が80%以上であった。そのうち少数ではあるが、生存率が他の系統よりも低い系統がみつかり、これらを2次スクリーニングの候補とした。

 また、乾燥耐性に関わる遺伝子が、どの染色体にあるのかを調べるために、比較的乾燥感受性であるw系統と、乾燥耐性があるCS系統の正逆交配を行い、得られたF1の乾燥耐性を調べた。その結果、w系統とCS系統の正逆交配で得られたF1の生存率は、どちらの交配のF1雌雄ともCS系統の生存率と差がなかった。この結果は、 w系統の乾燥感受性に関わる遺伝子は常染色体上にあり、さらにその遺伝子は劣性であることが示唆された。しかし、この結果からはw系統の乾燥感受性に関わる遺伝子は一つだけなのか複数あるのかは判断できなかった。