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翅毛スポットテストによる磁場の変異原性の検出

小穴孝夫、岡田美紀江、池畑政輝

((財)鉄道総研・環境生物工学)


電磁場に変異原性があるか否かを検証するため、ショウジョウバエ翅毛スポットテストをおこなった。変異スポットの出現頻度を高める目的で、通常のmwh/flr試験系に複製後修復の欠損突然変異mei-41を導入した。3齢幼虫を5T(50000ガウス)の定常磁場に24時間連続曝露し、羽化後、翅を切り取って変異スポットの有無を顕微鏡観察した。曝露群では、体細胞組換によるスポットが対照群に比べて有意に増加したが、その程度はごくわずかなものであり、5T磁場の変異原性は1.74mJ/m-2 secの紫外線と同程度と考えられた。また曝露前後にビタミンEを投与した群では曝露の効果がほぼ完全に抑制された。有機化学の領域では1T以下程度の磁場がフリーラジカルの寿命に影響を与えることが知られている。ビタミンEが非特異的なラジカルスカベンジャーであることから、磁場が細胞内に偶発的に生じるラジカルの寿命を伸ばすことで間接的に変異原性を発揮している可能性が示唆された。変異スポットの大きさの分析から、スポットの形成は磁場曝露中に限られ、晩発効果はないと推測された。また、染色体不分離や末端欠失、点突然変異などによるスポットは曝露によって増減しなかった。