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翅縁形成におけるhiiragiの役割

村田武英1、小倉啓司1、岡野栄之2、横山和尚1

(1: 理研筑波センター、2: 阪大・医・神経機能解剖学、科技団(CREST))


 Wingless蛋白質は背/腹軸に沿って発現し、翅原基の成長とパターン形成を調節する。翅縁におけるwinglessの発現と維持は、Notch、Delta、Serrate (Ser) が関与するフィードバックおよびcutによって調節されている。hiiragi (hrg) 遺伝子の変異体hrg[P1]では成虫翅縁の欠失が観察されることから、hrgは翅縁形成において何らかの役割を果たすと考えられる。hrg[P1]の表現型とよく似た表現型をもつ変異体としてSer[D]が知られている。そこで二重変異体を作成したところ、hrg[P1]; Ser[D]/+では翅縁の欠失の度合いがhrg[P1]単独およびSer[D]/+単独よりも大きいことが観察された。さらに、hrg[P1]とdeltexあるいはNotchとの二重変異体でも欠失の度合いが大きくなり、逆にHairless(この変異体ではNotchシグナルが増強されている)によってhrg[P1]の表現型は抑制された。このことは、hrg[P1]ではNotchシグナルが抑制されていることを示しており、翅縁形成におけるNotchシグナルにhrgが何らかの形で関わることを示している。さらに、翅原基の背/腹境界に発現する遺伝子の発現がhrg[P1]では抑制されていることが観察された。以上のことから、hrgは翅縁形成においてNotchシグナルに関与しつつマージンオーガナイザーの制限された発現パターンの形成あるいはその発現維持において機能することが考えられる。