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神経上皮背腹軸方向の分化とDER

八木克将1,2、鈴木利治2、林茂生3

(1: 生研機構、2: 東大・薬・神経生物物理、3: 遺伝研・無脊椎)


 神経系の構築は始めに単純なパターンで幹細胞である神経芽細胞(neuroblast, NB)が現れることに始まる。NBの出現パターンは神経系の発生において複雑なネットワークが作られる際の基礎となる。最も初期のNBのパターンは体幹部で片半球当り前後軸方向に4列、背腹軸方向に3列に並ぶパターンである。それぞれのNBは固有の組み合わせのマーカー遺伝子を発現することから、前後軸、背腹軸の2次元の情報によってそれぞれの細胞のアイデンティティを獲得していると考えられる。前後軸の情報に関しては分節化遺伝子が考えられるが、腹側、中央部、背側に分かれる背腹軸方向の分化がどのような制御を受けているかについてはわかっていなかった。

 我々はescargot (esg) がごく初期 (stage6) の胚で背腹軸方向に神経上皮を3分するパターンで発現することに注目しesgの発現をマーカーとして神経上皮の背腹軸方向の分化におけるEGFレセプター(DER)の機能を解析した。従来のより後期の胚での表現型の解析からはDERは腹側のcell fateの決定に重要と考えられてきた。しかし、今回解析したstage6ではDERシグナルが神経上皮の腹側ではなく中央部の決定に関わっていることが明らかになった。

 現在、さらにDERシグナルによる神経系の背腹軸方向の分化のコントロールのメカニズムについて解析を進めている。今回はesg以外の神経マーカーの発現の変化などについて発表する。