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glial cells missing の作用機構の解析

秋山(小田)康子1 細谷俊彦2 堀田凱樹1,2

(1: 東大・理・物理、2: 東大・遺伝子)


 神経細胞・グリア細胞は共通の母細胞から誕生する。glial cells missing (gcm)遺伝子は神経発生において細胞がグリア細胞への運命をたどるよう決定する因子である。これまでに、gcmの産物はN末端側に新しいタイプのDNA結合ドメイン(gcmモチーフ)を持つこと、そしてgcmタンパク質が認識するDNAの塩基配列を明らかにした。

 強制発現系を用いた解析から、神経系の細胞にgcmの発現を誘導すると神経細胞になるべき細胞もグリア細胞へと運命転換することが分かっていた。そこで、gcmは神経系にcommitされた細胞以外に対しても細胞運命に影響を及ぼし得るのか、UAS/GAL4のシステムを用いて解析した。その結果、強制発現されたgcmにより表皮細胞はステージ13になると、グリア細胞特異的な遺伝子、repoを発現するようになることが明らかとなった。repo陽性となった細胞はFasIIIの発現を失い、形が円くなり胚内部へと陥入する。また、由来の全く異なる中胚葉細胞においてgcmの発現を誘導しても、repo陽性の細胞が現れ、体壁筋の形成が異常となった。このようにgcmは神経系以外の細胞に対しても影響を及ぼすことが明らかとなった。しかし、gcmはすべての細胞に対して、また、あらゆるステージにおいてrepoの発現を誘導できるわけではない。このことからgcmと協同して働く他の分子の存在が考えられる。

 truncate formのgcmの強制発現の解析も行っているので、そのこともあわせて報告したい。