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グリア細胞の発生における repo 遺伝子産物の役割

湯浅喜博1、吉川真悟2、岡部正隆1、岡野栄之1

(1: 阪大・医・神経機能解剖学、科学技術振興事業団 ( CREST )、 2: 筑波大・基礎医・分子神経生物学)


 ショウジョウバエ repo 遺伝子は、光照射時の角膜表面の field potential を測定する Electroretinogram の波形の極性が逆転する repo変異体の原因遺伝子として単離された。repo 遺伝子はpaired 類似のホメオドメインをコードし、その遺伝子産物は、midline グリア以外の全ての中枢神経系のグリア細胞特異的に発現する転写因子であり、機能欠失型突然変異体の解析から、少なくともグリア細胞の終分化の過程に必要であることが明らかとなっている。本研究では repo 遺伝子のグリア細胞の発生における役割を調べる目的で、酵母の転写因子である Gal4 の認識配列 ( UAS ) を repo cDNAの上流に有したトランスジェニックフライを作成し、全てのニューロブラストで Gal4 を発現させるscabrous-Gal4 系統と交配することにより、 repo 遺伝子産物を中枢神経系内に異所的に発現させその効果を観察した。その結果、我々は複数のグリア細胞のマーカー遺伝子が異所的に発現することを観察した。さらに、より直接的な下流標的因子を単離する目的で、yeast を用いた yeast one -hybrid 法によるRepo 蛋白質結合領域のスクリーニングを行っている。ガラクトースの誘導によりRepo 蛋白質を発現させるベクターとショウジョウバエのゲノムDNA 断片を含むベクターを酵母内に導入し、Repo 蛋白質との結合によってレポーター遺伝子を活性させうるゲノム断片をスクリーニングした。現在までのところ 3 万クローンのスクリーニングを行い、複数の陽性クローンを得ており、現在それらのクローンについての解析を行っている。