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microsomal GST ショウジョウバエホモログの発見とクローニング

鳥羽岳太1、相垣敏郎1,2

(1: 都立大院・理・生物、2: 科技団・さきがけ)


 glutathione S-transferase(GST)は細菌から哺乳類まで普遍的に存在する酵素で、各種毒性物質のグルタチオンコンジュゲート生成を触媒する。GSTには多くのアイソザイムが存在し、哺乳類では多コピーの遺伝子にコードされる可溶性の酵素と、それぞれ単一コピーの遺伝子にコードされる2種類の膜結合型の酵素が知られている。可溶性、膜結合型ともにGST活性を持つことから解毒作用に重要な役割を持つと考えられているが、突然変異体が得られていないこともあり、それぞれが生体内で果たす具体的な機能の解明には至っていない。ショウジョウバエゲノムの強制転写による表現型を指標としたスクリーニングにおいて、成虫の複眼、翅、触角等の形態に異常の見られた1系統で強制転写されているRNAの塩基配列を決定したところ、ヒトとラットの膜結合型GSTの一つであるmicrosomal GSTに高いホモロジーを持つペプチドをコードしていることが判明した。異所的発現が強い形態異常を引き起こすことは、microsomal GSTが形態形成に何らかの機能を持っている可能性を示唆している。現在、この系統をもとにベクターのjump outによる機能喪失突然変異体の作成を試みている。異所的発現と機能喪失変異の解析によりmicrosomal GSTの生体内機能が明らかになるものと期待される。