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強制発現ベクターを用いた Gene Search システムの開発

相垣敏郎1,2、 鳥羽岳太1

(1: 都立大院・理・生物、2: 科技団・さきがけ)


 異所発現による表現型の検索は遺伝子機能に関する情報をうるための有効な手段の一つである。私達は異所発現による表現型をてがかりにして遺伝子を探索する方法としてGene Searchシステムを開発した。条件的に制御できる強制発現ベクター(Gene Search vector)として、Pエレメント末端反復配列の内側にGAL4転写因子の標的配列であるUAS及びその下流にhsp70遺伝子の基礎プロモーターを挿入したものを構築した。GSベクターが挿入された系統(GS系統)においては、GAL4タンパク存在下でベクターに隣接するゲノムDNAが強制的に転写される。約700のGS系統をGAL4発現系統に交配して、F1成虫の表現型をスクリーニングした。成虫原基のほぼ全域に発現されるようなGAL系統と交配した場合には約25%が致死、15%が可視的表現型を示した。また、GAL4発現が特定の組織や細胞集団に限定されている系統(dpp-GAL4やsev-GAL4)を用いた場合には、先の交配で致死になった株の多くが可視的な表現型を示した。

 強制転写産物の5'領域はベクター末端部の配列を含み、3'端にはpoly (A)鎖が付加される。これらの配列に対応するプライマーを用いてRT-PCRによりcDNAを増幅して塩基配列を決定した。データベースの検索を行ったところ、表現型を示したGS株の内約70%が未知遺伝子への挿入であり、Gene Searchシステムが未知遺伝子を検出するための方法として有効であることが示された。