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異所発現システムを用いた運動神経回路形成ミュータントの探索

梅宮猛1,2、竹市雅俊1,2、相垣敏郎3,4、能瀬聡直1

(1: 基生研・行動制御、2: 京大・理・生物物理、3: 都立大・理・生物、4: 科技団・さきがけ)


 ショウジョウバエの幼虫の蠕動運動や方向転換に関与する体壁の筋肉系は半体節あたり30本の筋繊維で構成される。これらを支配する約40個の運動神経細胞は、胚発生後期に各々決められた経路で軸索を伸長し、特定の標的筋肉を認識しシナプス結合する。正確な神経回路の形成過程は重複した分子メカニズムを備えていることが示唆されており、その解明には遺伝子ノックアウトと併せて異所発現の実験が有効であると考えられる。そこでゲノム中にUASプロモーターをランダムに挿入した一群のGS株(gene search lines;相垣ら、本研究会発表参照)をこの系に適用し、筋肉での異所発現が運動神経の走行や標的認識に異常を生ずるような遺伝子を探索することを試みた。GSベクターがトラップした未知の遺伝子を体壁の全筋肉で強制発現させるために、各GS株を24B-GAL4株と交配させた。このGAL4株は、筋肉組織においてのみ特異的な発現を神経支配以前からもたらし、三齢幼虫の筋肉でも強い発現が持続する。各F1の三齢幼虫を抗FasII免疫染色し、運動神経の投射パターン、シナプスの形態等を観察した。その結果これまでに興味深い表現型を示す株を幾つか見出した。クラス1:特定の筋肉の形成がおかしくなり(欠損、異常な癒着など)、二次的な変化が運動神経に見られるもの。クラス2:筋肉の分化は形態的には正常であるが、運動神経の配線様式が一部乱れるもの。クラス2は特定の運動神経に対し活性をもつ標識シグナルを異所的に提示した結果である可能性が高い。本研究会ではこうした途中経過を報告する。