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bHLH-PAS 蛋白質ヘテロダイマー、trachealess/dARNTとsingle-minded/dARNTによるbreathless の転写制御

大城朝一、西郷薫

(東大・理・生化)


ショウジョウバエにおける脊椎動物のFGF 受容体のホモログの一つであるbreathless(btl) は、胚期において気管系を構成する細胞及び、CNS mid line precurser cells(MLP) において発現している。これらの組織におけるbtl の転写制御機構を明らかにするために、 レポーター遺伝子としてlacZ 遺伝子を用いたエンハンサーアッセイを行った。最終的に気管系及びMLP での転写に必要な最小限のDNA 断片、約 300bpを同定した。この配列のなかには、MLPで特異的に発現しておりbHLH-PAS タイプの転写因子である Single-minded(SIM) が結合する配列 TACGTG が三カ所存在していた。これらの配列に特異的に変異を入れるとMLPでの発現が失われたことから、実際にSIM がこの配列を標的としてDNA に結合しbtl の転写を活性化していることが示された。興味深いことに、MLPと同時に気管系の発現も失われた。同じくbHLH-PAS タイプの転写因子の転写因子であり気管系で発現しているtracheless はその変異体の解析から、気管系の発生に必要であることが示されている。TRH とSIM は DNA結合領域が非常によくにており、よってTACGTGを共通のターゲットにしてbtl の気管系及びMLP の発現を活性化することが予想された。そこで、TRH とSIM の共通のヘテロダイマーの相手と予想されるARNT 遺伝子をショウジョウバエでクローニングし(dARNT)、実際にTRH とdARNT はヘテロダイマーを形成しCME 配列に結合することを示した。dARNTはMLP でも発現しており、よってSIMともヘテロダイマーを形成し、btl を含む下流の遺伝子群の転写を活性化していることが予想される。