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ショウジョウバエのフェノールオキシダーゼ  −in situ ハイブリダイゼーション法による遺伝子座の推定−

木村宏美1、山田恭子1、松田宗男2、浅田伸彦1

(1: 岡山理科大・理・生物、2: 杏林大・医・生物)


 無脊椎動物のフェノールオキシダーゼ(Phenoloxidase: PO)はメラニン色素の形成、クチクラの硬化、異物認識、生体防御などに関わる多目的的な酵素で、体内では不活性な前駆体プロフェノールオキシダーゼ(Prophenoloxidase:proPO)として存在している。キイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)のproPOには、活性化するとモノフェノールを酸化するA1と、モノフェノールは酸化しないがジフェノールを酸化するA3の2種類のアイソフォームが知られている。

 A1の構造遺伝子であるMoxの遺伝子座は、遺伝学的・細胞学的方法により第2染色体右腕79.6、唾腺染色体では55A-Bであり、A3の構造遺伝子であるDox3の遺伝子座は、遺伝学的方法により第2染色体左腕53近傍であると報告されている。そこで本研究では、キイロショウジョウバエにおいてproPO A1のcDNAをプローブとしてin situ ハイブリダイゼーションを行い、Moxの唾腺染色体上の位置を確認した。その結果、第2染色体右腕の55Aのみにポジティブなシグナルが見られ、Moxの遺伝子座のより詳細な位置を決定することができた。また、近縁種のアナナスショウジョウバエ(D. ananassae)において同様の実験を行ったところ、第3染色体の65Dにシグナルが見られ、ここにキイロショウジョウバエのMoxと相同性がある遺伝子が存在することがわかった。