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形態形成運動における細胞間接着のダイナミクス

小田広樹1、竹市雅俊2、月田承一郎1,3

(1: 月田細胞軸プロジェクト、ERATO、JST、2: 京都大・理・生物物理、3: 京都大・医・分子細胞情報)


 ショウジョウバエの原腸陥入では、上皮性の細胞が間充織性の細胞 (中胚葉細胞) に転換すると同時に、胚内部へ進入するダイナミックな形態形成運動が見られる。私たちは、この中胚葉の陥入運動を支配する分子メカニズムの解明を目指し、細胞間接着や細胞骨格のダイナミクスを追究している。

 DEカドヘリンは初期胚における中心的な細胞間接着分子であるが、予定中胚葉では原腸陥入を機にそのDEカドヘリンは消失し、DNカドヘリンに取って代わる。この中胚葉におけるカドヘリンのサブクラスの切り替えは、twistやsnailなどの中胚葉の分化決定因子の制御下で厳密に行われるが、その蛋白レベルでの切り替えはかなりゆっくりとしたもので、E型からN型へカドヘリンのサブタイプが変わることによって生じる接着性の差異が陥入運動の動力として貢献している可能性は非常に低いことが示唆された。現在までの私たちの解析結果は、DEカドヘリンによる接着の消失過程が原腸陥入における中胚葉の形態形成運動に重要であることを支持している。その過程でDEカドヘリンは、細胞骨格の再編成や細胞膜の脱極性化に伴って細胞膜上でダイナミックな挙動を示した。本研究会ではこのカドヘリンの挙動に加え、カドヘリンと係わりのある分子の挙動を合わせて紹介し、形態形成運動におけるカドヘリン接着のダイナミクスに関して議論したい。