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Dppシグナル伝達系におけるp38 MAP kinaseの機能

安達卓1、中村真2、入江賢児3、友安慶典2,4、佐野頼方1、森英治3、上野直人2、松本邦弘3、西田育巧1

(1: 名大・理・生物、2: 基生研・形態形成、3: 名大・理・分子生物、4: 北大・薬・生体機能)


 MAPキナーゼ(MAPK)は、多様な刺激に応答して活性化される細胞内情報伝達因子である。我々は酵母MAPK突然変異体hog1に対する相補検索により、MAPキナーゼスーパーファミリーのひとつ、p38 MAPKのショウジョウバエホモログ (DmMpk2)を同定した。哺乳類から最近同定された細胞質キナーゼ、TAK1はTGF-βやBMP-4などのシグナル伝達因子として機能することが知られるが、その下流ではp38 MAPKが働き得ることが予測されていた。そこで、ショウジョウバエにおけるTGF-βスーパーファミリーの一つ、Dppのシグナル伝達におけるDmMpk2の機能を検討した。

 構成的活性化されたDppレセプター(Tkv)を翅に発現させると、顕著な形態異常が生じる。ここにドミナントネガティブ型のDmMpk2やアンチセンス RNA、またはDmMpk2欠失染色体を導入すると、いずれの場合にも有意な表現型抑圧が認められた。これらの抑圧は野生型DmMpk2の共発現により解消される。また野生型DmMpk2のみを活性型Tkvと共に発現させると表現型の増強が認められた。Tkvシグナルを受けて転写が誘導される遺伝子、ombの発現は、ドミナントネガティブDmMpk2によって抑制され、穏和なomb突然変異体の表現型はドミナントネガティブDmMpk2によって増強された。さらに、活性化型Tkvの発現は活性型DmMpk2の量を上昇させることが生化学的に示された。以上の結果は、翅などの正常発生において、DmMpk2がTkvの下流で機能することを示している。