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Dppシグナルを負に制御するDaughters against dpp

常泉和秀、鴨志田有子、多羽田哲也

(東大・分生研)


 ショウジョウバエの翅ではTGF-β familyに属するシグナル分子Decapentaplegic(Dpp)が濃度勾配を形成し位置情報を決定していると考えられている。その決定機構の解明のためdppに誘導される新規遺伝子Daughters against dpp(Dad)を単離した。DadはDppのシグナル伝達因子であるMothers against dpp(Mad)のC末と弱い相同性を持っていた。

 翅成虫原基でのDadの発現は、dppや構成的に活性化されたthick veins(tkvQ253D)の異所性発現により誘導され、FLP-FRT systemにより形成されたtkvクローンで抑制されることからDadはdppにより正に制御されるターゲットと考えられる。tkv[Q253D]やMadを翅辺縁予定領域に異所性発現させた成虫翅では翅辺縁部が前後軸方向に伸長するのに対し、Dadを異所性発現させた成虫翅では、極端な場合翅が形成されずdpp変異株に似た表現型を示す。tkv[Q253D]やMadとDadを共発現させると互いの表現型が相補され、正常翅様の表現型を示す。 optomotor-blind(omb)は翅成虫原基においてdppのターゲットとして知られる転写因子である。Madを異所的に発現するクローンではDppシグナルに依存しながらもomb発現量が増加するのに対し、Dadを異所的に発現するクローンではその発現が抑制される。

 以上の結果は、dppにより正に制御されるDadがDppシグナルに抑制的に作用することを示し、モルフォゲンの作用機構に負のフィードバック制御が内包されていることを示唆している。