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Dpp, Wg の標的遺伝子 dve による midgut の cell-type specification

中越英樹1,2、鍋島陽一1、松崎文雄1

(1: 国立精神・神経センター・遺伝子工学 2: さきがけ研究 21「知と構成」)


 defective proventriculus (dve) 遺伝子は、視覚認識行動に異常をきたした突然変異体 dve[SH255] の原因遺伝子として、我々が単離した転写制御因子である.dve 遺伝子の midgut における発現は midgut の最前部、最後部および中央部 (middle constriction のおきる前後) に認められた.midgut の最前部は前胃 (proventriculus; PV) の外層を構成する領域であり、致死変異 dve[1] の表現型は、PV の形態異常を示し1齢幼虫で致死となった.PV は外層、中間層 (mesoderm-free のかぎ穴構造に由来)、内層の3層から構成され、PV の形成には、かぎ穴構造に発現する Hedgehog (Hh), Wingless (Wg) の活性が必須である.midgut 最前部における dve の発現はWg に依存している事が明らかとなった.

 一方、midgut 中央部は幼虫における middle midgut (copper, interstitial, large-flat, iron cells) を構成する.これらの細胞型の決定には、Decapentaplegic (Dpp) および Wg の活性が必要である.dve[1] はエンハンサートラップ系統であり、1齢幼虫における lacZ の発現 (dve[1]-lacZ) は interstitial, large-flat cells に認められ、copper cells には発現していなかった.copper cells の specification に必須である labial (lab) は、その発現が Dpp-dependent であるが、midgut 中央部における dve の発現もまた Dpp に依存していた.dve mutants においては、dve[1]-lacZ の発現が copper cells においても異所性に発現するようになり、copper, interstitial cells の配列に乱れが生じていた事から、midgut の細胞型特異性の決定において dve 遺伝子が Dpp signal の標的遺伝子として重要な機能を果たしている事が明らかとなった.