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Na チャネル異常突然変異 para の神経筋接合部電位記録による解析

小林紀雄1,2、田中良晴2、蒲生寿美子2、小松 明○1

(1: 東女医大・1生理、2: 大阪府大・総合・自然環境)


 キイロショウジョウバエの行動異常突然変異のひとつである para の成虫は高温条件で麻痺を引き起こす。 para は電位依存性 Na チャネルのα-サブユニットをコードする遺伝子であり、また高温条件下では神経の活動電位がブロックされることが知られている。本研究では、3令幼虫の神経筋標本を用いて神経刺激によって誘発される興奮性接合 部電位(EJPs)を腹部縦走筋 m.6 から記録し、神経における活動電位発生の有無を判定した。

 まず、野生型 CS および para の3つのアレルにおける温度感受性を比較検討した。m.6 からは大小2つのEJPs が記録されるが、大きな EJPs を指標にすると、para-ts1 は37℃で EJPs が完全に消失し、para-ts3 では約6割が欠落したが、para-hd838 と CS では欠落はなかった。しかし、para-hd838 は37℃で一部の標本で(14例中4例)小さな EJPs の欠落が認められた。したがって、幼虫の神経筋標本を用いた活動電位ブロックの温度感受性の順位は、para-ts1>para-ts3>para-hd838≧CS となる。この順位は、幼虫の高温麻痺に対する感受性の順位、para-ts1>para-ts3>para-hd838=CS とよく一致した。

 つぎに、para-ts1 を用い、37℃でK チャネル遮断剤の TEA を与えたところ、自発性の神経放電によるとみられる EJPs が生じた。37℃で自発性の EJPs の生じる TEAの濃度は para-ts1 で 5-10 mM、CS で 1 mM 以下であった。この結果は、para における活動電位の温度感受性ブロックは機能的な Na チャネルの密度が減少し、Na チャネル/K チャネルの比が減少したために生じるという仮説(O'Dowd et al., 1989; Nelson and Wyman, 1990)を支持する。