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ショウジョウバエ超らせん化因子の唾腺染色体上の分布

相田紀子1、広瀬 進1,2

(1: 総合研究大学院大・生命科学、2: 遺伝研・形質遺伝)


 DNA の超らせん構造は転写や複製に重要な役割を担うと考えられている。真核生物には主に2タイプの Topoisomerase ( Topo I & Topo II ) が存在するが、これら単独では共にリラックス活性はあるが、負の超らせんを導入する活性は示さない。

 超らせん化因子 Super Coiling Factor (SCF) は、Topo II と協調してDNA に負のらせんを導入するタンパク質である。現在までに、カイコとショウジョウバエから SCF の cDNA がクローニングされ、DNA に負の超らせんを導入する活性の役割について in vitro での解析を行って来た。

 生体における SCF の役割を調べる端緒として抗体によるショウジョウバエの組織染色を試みたところ、唾腺の核が染色された。そこで唾腺染色体を用いて interphase における genome 上での SCF の局在を調べた。クロマチンが極度に凝縮したヘテロクロマチンの部分は染色されず、クロマチンが弛緩して DNA 密度が比較的低い interband の一部が染色され、それらの多くは puff を形成していた。さらに個体に熱ショックを加えた後に観察すると、これらのバンドの染色が消失し、新たに熱ショックで発現誘導される遺伝子座位が染色された。これらの結果から、SCF は転写活性領域における DNA の超らせん構造の調節に関与していることが考えられる。