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ショウジョウバエDRab1変異体での、ロドプシン輸送阻害と視細胞の形態変異

佐藤明子、徳永史生、河村悟、尾崎浩一

(阪大・院理)


 Rab蛋白質は低分子量GTP蛋白質に属し、細胞内小胞輸送の制御に関与している。我々は、ショウジョウバエから9種のRab蛋白質をクローニングし、これらすべてについて、GTP結合・加水分解部位に変異を導入した変異DRabを熱処理により発現する変異体(Dominant negative mutant)を作成中である。これらの各変異体での視細胞における蛋白質の輸送阻害や形態変化を検討することにより、視細胞の形態形成・維持への蛋白質選別輸送系の役割を明らかにしたいと考えている。本研究会では、DRab1 mutantで観察された光受容蛋白質ロドプシンの輸送阻害と、視細胞の形態変化を報告する。

 DRab1(N124I)発現により、新生ロドプシンは輸送の初期の段階が阻害され糖鎖の一部がトリミングされた39kDaの合成中間体が蓄積した。抗DRab1抗血清による染色では、DRab1は、Golgi体に存在することが示唆され、DRab1が新生ロドプシンのERからGolgi体への輸送に関与すると考えられた。DRab1 mutantの形態を電子顕微鏡により定量的に解析した結果、DRab1(N124I)の短期的な発現により、Golgi体が小胞集団へ置き換わることが分かった。また、このときER膜の膨潤化も観察されたが、それ以外は正常な形態を保っていた。さらに、DRab1(N124I) の長期的な発現により、光受容膜ラブドメアの縮退とERのmultilamella構造化、嚢胞構造化が起こることが分かった。しかし、カートリッジ・シナプス構造には明瞭な変化はみられなかった。視細胞のような極めて分極化した細胞では、その領域により、DRab1による小胞輸送の必要性が異なっていると考えられた。