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ユークロマチン89A領域に存在するサテライトDNAとその近傍の遺伝子

松林宏、山本雅敏

(京都工繊大・応用生物)


 ヘテロクロマチンの主要な構成DNAとして、様々なサテライトDNAが見いだされている。キイロショウジョウバエでは10数種類のサテライトDNAが知られており、それらは5bpから359bpの塩基配列が高頻度に反復し、全ゲノムの約20%を占める。これらサテライトDNAは動原体近傍ヘテロクロマチンにのみ存在し、その機能についてはよく解っていない。我々は、第3染色体右腕ユークロマチン領域89Aに存在する遺伝子を解析中、主要なサテライトDNAとして知られているTATAAが28回タンデムに反復している領域が存在するのを見いだした。この領域のサテライトDNAが系統間でどの程度保存されているのかを知るために、サテライト領域を挟むかたちでプライマーを設計しPCRにより解析を行った。その結果、系統により様々な長さの断片が増幅されてきた。この事は、系統によりサテライトの反復回数が様々であることを示唆している。しかし系統内(個体間)ではその反復回数は安定に維持されている様に見える。現在この考えを確かめるために塩基配列の決定を行っている。哺乳類では個体間で反復回数の多型を示すマイクロサテライトが数多く知られているが、ショウジョウバエでは今のところそのような例はほとんど見つかっていない。興味深いことに、このサテライトDNAより180bp離れた領域にP因子が挿入した系統ではそのP因子上のwhite遺伝子の発現がvariegationを示す。この事はサテライトDNAによりvariegationが誘導される可能性を示唆する。