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ショウジョウバエFTZ-F1遺伝子の転写因子の同定

増田祥子1、影山裕二2、広瀬 進1,2、上田 均1,2

(1: 総研大・生命科学、2: 遺伝研・形質遺伝)


 FTZ-F1は、ショウジョウバエの正常な脱皮・変態に必要な転写因子である。FTZ-F1の時期特異な発現はエクジソンによって調節されており、エクジソンパルス後に発現が誘導される。我々は既にFTZ-F1遺伝子の時期特異的な発現には-0.7〜+0.5 kbの1.2 kbがcis調節領域として必要であり、さらにこの1.2 kb内の-340 bp (site I)、+170 bp (site IIa)、+450 bp (site IIc) に時期特異的に発現する因子(それぞれ、I-4、II-4、II-7と命名)が結合することを明らかにしている。

 このうちのsite IIaおよびsite IIcの塩基配列が、脊椎動物の核内レセプターの1つであるRORα1の結合サイトのコンセンサス配列と一致した。RORα1のDrosophilaのホモログであるDHR3の抗体がII-4およびII-7と結合することから、II-4およびII-7はDHR3であることが示唆された。次に、1.2 kbのcis調節領域内のsite IIaおよびsite IIcにsite-directed mutagenesisによって変異を導入した断片とlacZ遺伝子の融合遺伝子を持つtransgenic flyを作製し、lacZ遺伝子の発現を調べた。その結果、DHR3結合部位に変異が生ずると発現量が大きく低下すること、しかし、時期特異的発現は維持されることが明らかになった。このことより、DHR3がFTZ-F1遺伝子の発現に正に働く因子であること、また、DHR3以外にも正と負に働く因子がFTZ-F1遺伝子の発現に関与することが示唆された。現在、他の因子について解析中である。