P-61


転写因子FTZ-F1の機能

上田 均、山田正明、広瀬 進

(遺伝研・形質遺伝)


 FTZ-F1は、nuclear hormone receptor superfamiyに属する転写調節因子で、embryo後期、幼虫の脱皮や変態期の特定の時期に、エクダイソンのパルスによって誘導され発現する。この幼虫脱皮や変態期でのFTZ-F1の機能を探るため、FTZ-F1の変異株の解析をおこなった。P-elementのexcisionによって作成した変異株FTZ-F1el7は、embryonic lethalであったため、hsFTZ-F1遺伝子を導入し、embryoの後期の本来FTZ-F1が発現している時期に熱ショックを与え、FTZ-F1を発現した。その結果、約90%のembryoが1齢幼虫に成ることができた。この1齢幼虫は、2齢となる時期になっても、脱皮せず、1齢にとどまった。そこで、1齢幼虫の後期に、再び熱ショックを与えFTZ-F1を発現させたところ、約40%が2齢幼虫に成ることができた。この2齢幼虫は、3齢と成る時期になっても、脱皮せず、2齢にとどまった。そこで、再び熱ショックを与えFTZ-F1を発現させたところ、一部が3齢幼虫に成ることができた。この3齢幼虫は前蛹期まで発生した。

 以上のことから、FTZ-F1は、時期特異的に発現することが、正常なembryogenesisおよび幼虫脱皮に必要な因子であると考えられた。