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ショウジョウバエ CaM キナーゼ II 遺伝子の転写制御解析

高松芳樹1、中越英樹2, 3、西田育巧4、山内 卓5、大迫俊二1

(1: 東京都神経研・細胞生物、2: 国立精神神経センター・遺伝子工学、3: さきがけ研究21、4: 名大・理・生物、5:徳島大・薬・生化)


 カルモデュリン依存性プロテインキナーゼ II(CaM キナーゼ II )は、脳、神経系に多く存在し、記憶を含む高次機能に関わると考えられる酵素である。我々はショウジョウバエを利用してこの遺伝子の発現制御機構を調べている。これまでの解析で、CaM キナーゼ II 上流領域とLacZ 遺伝子のfusion 遺伝子を持つトランスフォーマントでの Lac Z遺伝子の発現を調べた結果、 転写開始点より上流 については500塩基対があれば、 LacZ遺伝子の発現は CaM キナーゼ II 遺伝子の発現パターンを反映した、脳、神経系特異的なものとなることを明かにしている。今回次の点を中心に発表を行う。1)上流500塩基対について、この領域に結合して転写を制御する核内因子を想定し、これを5つの小フラグメントに分けた後、ショウジョウバエ胚から調製した核抽出液を用いてゲルシフトアッセイを行った。その結果このうち1つのフラグメントについて強いシフトバンドが認められた。さらに競合実験の結果から、この小フラグメントに対する核内因子の結合は配列特異的であることを確認した。 2)CaM キナーゼ II の機能から推定してその発現パターンは脳高次機能中枢を中心としたものになると考えられる。上流500塩基対までの領域を導入したトランスフォーマントの3齢幼虫の脳で、発現の局在を見いだした。3)CaM キナーゼ II 遺伝子の神経系での発現に必須の配列があるとすれば、D. melanogasterとD. virilisのゲノム DNA の塩基配列間でよく保存されているはずである。実際に両者の ゲノム DNA の塩基配列の比較を行った結果、転写開始点付近に、複数の、よく保存されている塩基配列を見いだした。