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GFPで標識されたショウジョウバエ性ペプチドの生体内挙動

Peyre Jean-Baptiste1、相垣敏郎1,2

(1: 都立大・理・生物、2: JST・PRESTO)


キイロショウジョウバエ雄の副精巣で生成される性ペプチド(SP)は36アミノ酸残基からなり、交尾時に精液の一部として雌に渡される。雌に渡された性ペプチドは、交尾後の雌で観察される行動および生理的変化を引き起こす(産卵管を突き出すことにより再交尾を拒否し、産卵を開始する)。性ペプチドは、雌の体液中を通って、標的部位に達すると考えられている。本研究では、Green Fluorescent Protein (GFP)をマーカーとして、雌体内における性ペプチドの挙動を解析した。性ペプチドのプロモーター配列の下流にGFP遺伝子を配置した融合遺伝子を構築し、形質転換体を作成した。形質転換した雄で発現する融合タンパクは蛍光を発し、性ペプチドと同様に副精巣内腔に分泌され、交尾により雌に渡された。Gal4-UAS異所的発現システムを用いて、未交尾雌において融合タンパクを発現させたところ、約60%の排卵が観察され、SP-GFPが性ペプチドの活性を保持していることが示された。形質転換した雄と交尾した野生型の雌では、管状受精嚢および受精嚢、輸卵管細胞で交尾後長時間にわたって蛍光が観察された。性ペプチドは管状受精嚢および受精嚢において精子と関連した何らかの役割を有すること、及び輸卵管細胞より体液中に拡散していくことが示唆された。また、精子を欠くXO/SP-GFP雄と交尾した雌では、授精嚢におけるGFP蛍光が速やかに消失することから、SPの挙動は精子と密接に連関しているものと推察される。