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ショウジョウバエ感覚器官形成におけるHairy WRPWモティーフとGroucho転写抑制ドメインの機能解析

大迫俊二、高松芳樹

(東京都神経研・細胞生物)


hairyは、achaeteの5'上流にあるHairy結合部位に特異的に結合し、感覚器官形成におけるリプレッサーとして機能する。我々はこれまで、HairyのC末端に存在するWRPWモティーフが、転写抑制とGrouchoタンパクとの相互作用を担うに十分な機能ドメインであること、さらにGrouchoを標的遺伝子のDNAに繋ぐことによって転写を抑制でき、GrouchoのN末端側にアミノ酸配列が進化上良く保存された転写抑制ドメインがあることを、培養細胞系を使って明らかにしてきた。今回、HairyのWRPWモティーフとGroucho転写抑制ドメインが、感覚器官形成において同様の機能を持つかどうかを調べた。まず、achaeteの5'上流領域に存在するHairy結合部位をGal4結合部位に置き替えたachaeteミニ遺伝子をachaete null変異体に導入した。この中には、胸部の背側の感覚毛が回復しhairy変異体にみられるようにL2翅脈に感覚毛を生じるものが得られた。一方、エフェクターとして熱ショックプロモーター下流にGal4-DNA結合ドメイン(Gal4DBD)のみ、Gal4DBD-WRPWあるいはGal4DBD-Groucho 1-264を繋いだものを導入した。両方を持つものに蛹化後熱ショック処理を行った結果、Gal4DBD-WRPWとGal4DBD-Groucho 1-264を持つものは、処理を行う時間に依存して、胸部の背側とL2翅脈の感覚毛が消失した。このように、WRPWモティーフとGroucho転写抑制ドメインは感覚器官形成において機能的抑制ドメインとして働くものと考えられた。