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トランスポゾンninjaの種特異性とコピー数の系統特異性

山本雅敏、金森保志、林秀樹

(京工繊大・繊維・応用生物)


 オナジショウジョウバエD. simulansから単離されたレトロトランスポゾンninjaはD. simulans種内でのゲノム内のコピー数に約20倍の差が存在する.コピー数が多い系統はninjaが遺伝学的に転移することが確認されたw[mky]とその派生系統に限られている.キイロショウジョウバエD. melanogasterでは低コピー数のninjaを持つD. simulansと同等数であると推定されるが,サザン解析で得られるバンドは全く異なっている.

 ninjaの塩基配列と高い相同性がLTRに見い出されるD. melanogasterの“死んだ”トランスポゾンauroraの全塩基配列を決定しninjaと比較したところ,auroraにはninjaのRT(reversetranscriptase)に相当する領域が欠失していた.この領域(1.6kb)をninjaに特異的なDNA配列と考えPCR解析を行うと,D. melanogasterにはこの部位が全く存在しないことが確認された.このことから,ninjaはD. simulansに特異的なトランスポゾンで,D. melanogasterにはninjaと約95%相同な配列を持つauroraだけが存在していることが明らかとなった.また,D. simulansのninjaコピー数が少ない系統ではninjaエレメントの崩壊が生じている事を示す数種のDNA断片が観察された.トランスポゾンauroraとninjaは共通祖先種に存在していたが,現在種特異的な住み分けをしているような結果が得られた.ninjaの崩壊に伴う構造変化とauroraの構造との比較を考察する.