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相同的組換え関連蛋白のショウジョウバエでの挙動

川崎勝己1、鄭 相民1、赤星映子2、柴田武彦1

(1: 理化学研究所・遺伝生化学研究室、2: 阪大・細胞生体工学センター)


 相同的組換えは減数分裂時の相同染色体の正確な分配やDNA修復に関わると考えられてきた。最近ヒト遺伝的疾患原因遺伝子が相同的組換え修復関連遺伝子として同定され相同的組換えの個体レベルの役割が明らかになりつつある。ショウジョウバエは組換え研究の蓄積、分子遺伝学的アプローチおよび試験管内再構成系の面から多細胞生物個体の組換え機構解析のひとつのよいモデルである。

 大腸菌RecA、出芽酵母RAD51、DMCに相同性をもつショウジョウバエDMR遺伝子は、N末端側にイントロンを有し、第3染色体99Dにマップされる. しかし、この領域に減数分裂や体細胞分裂の変異株は報告されていない(Akaboshi et al. 1994)。ショウジョウバエDMRタンパクの性質、活性について検討した結果、DMRタンパクはRAD51型のタンパクであると考えられた。また、特異的抗体によりショウジョウバエ発生分化過程におけるDMRタンパク存在様式を解析した結果、DMRタンパクは卵母細胞および初期胚で多く存在し、それ以降の発生過程でも存在することがわかった。一方大腸菌RecQに相同性をもつショウジョウバエDHQタンパクについて特異的抗体により同様の解析を行ったところ、DHQタンパクが卵母細胞および初期胚で特に多く存在することがわかった。これらの結果は減数分裂および体細胞分裂においてこれら組換え酵素が組換えを含むDNA代謝などに機能していることを示唆している。また、ショウジョウバエ初期胚での速い核分裂の際に効率的な修復ネットワークが働いていると考え、現在これらの酵素と相互作用するタンパクについて解析中である。