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C. elegansにおける非対称分裂に異常のある突然変異体の同定と解析

澤 斉1、幸池浩子1、Bob Horvitz2、岡野栄之1

(1: 阪大・医・神経機能解剖学 科学技術振興事業団 CREST 2: MIT、Biology)


細胞分裂によって性質や運命の異なる細胞を生み出す非対称分裂は、生物の発生の際、細胞の多様性を作り出す基本的な機構であるが、その機構は明らかではない。線虫C. elegansにおいては、数多くの非対称分裂が Wingless様のシグナル分子LIN-44とFrizzled様レセプター分子LIN-17によって制御されている。LIN-44シグナルに基づいて細胞内に極性が形成され、その後の分裂が非対称になると考えられる。しかし、極性がどのように形成されるのか全くわかっていない。lin-17の下流に働く遺伝子を同定するため、lin-17変異体と類似した表現型を持った変異体のスクリーンを行った。lin-17変異体ではT細胞の分裂の非対称性が失われるためphasmidと呼ばれる神経構造が異常になる。また数多くの細胞の分裂異常のため交尾に必要な雄の尻尾の構造が異常になる。約7500匹のF1からこれら2つの異常を持った変異体をスクリーンし、得られた6つの新たな変異体について解析を進めている。現在までに、このうち少なくとも2系統でT細胞などの分裂の非対称性が失われていることを確認している。このうちひとつは既知の遺伝子unc-61のアリルであることがわかった。unc-61変異体は、行動やvulvaの構造など数多くの異常を持っている。現在、これらの異常が非対称分裂の異常によって起こる可能性を検討している。また、unc-61遺伝子のクローニングを行い、この遺伝子の非対称分裂における役割について明らかにしていく予定である。既に、ある特定のコスミドクローン内に遺伝子が存在することをレスキュー実験により明らかにしている。