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肢及び触角原基の前部区画で発現する遺伝子の単離と機能解析

菊池美紀子1、小嶋徹也1、道上達男1、川北護一2、村上柳太郎2、西郷薫1

(1: 東大・理・生化、2: 山口大・理・自然情報)


 肢原基において区画特異的に発現する遺伝子を得るため、当研究室で行われたエンハンサートラップラインのスクリーニングにより、肢及び触覚原基の前部区画特異的にリポーター遺伝子lacZを発現する系統が2系統(PXb41, 415a)得られた。PXb41においてエンハンサートラップされた遺伝子の遺伝子座は第三染色体右腕89A、415aは第一染色体14Fであった。また、X-galを用いた活性染色、抗LacZ抗体を用いた抗体染色により発現様式を詳しく調べ、PXb41においては肢及び触覚原基の前部区画の発現の他に翅原基の前端部及び胚期体節の前部区画にも発現がみられることがわかった。次に、PXb41においてエンハンサートラップされた遺伝子を単離するため、P因子挿入点近傍のゲノムDNAを回収し、その断片を用いて挿入点近傍約25kbわたるゲノムDNAを得た。そして、野生型胚に対するin situハイブリダイゼイションを行ってある程度転写単位の存在領域を特定したあと、cDNAライブラリーをスクリーニングし約3kbのcDNAを得た。そのcDNAの塩基配列を決め、推定されるアミノ酸配列からこの遺伝子は約600アミノ酸残基からなる分泌蛋白質か膜貫通型蛋白質をコードしていることがわかったが、他の既知の遺伝子との有意な相同性は見出されなかった。さらに、この遺伝子座の近傍のDNA欠失変異体のなかからin situハイブリダイゼイションによりナル変異体を特定した。また、この遺伝子をGal4-UASの系を用いて異所発現させることのできる形質転換体を作製した。現在、これらのハエ個体を用いて生体内での機能を解析中である。