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中枢神経系の一部のニューロンで発現するショウジョウバエの新規ホメオボックス遺伝子

田渕克彦1、吉川真悟2、岡部正隆1、岡野栄之1

(1: 阪大・医・神経機能解剖学、科技団(CREST)2: 筑波大・基礎医・分子神経生物学)


 Paired-like homeobox 遺伝子群は現在までにショウジョウバエのrepo 遺伝子、aristaless 遺伝子、線虫のunc-4 遺伝子などが知られており、これらの遺伝子は発生段階において特定の細胞で発現し細胞の分化に関与している。 我々はショウジョウバエにおける新規のPaired-like homeobox遺伝子群の単離を目的として、 胚発生期のショウジョウバエから抽出したRNA を鋳型としてRT-PCR を行い、線虫のunc-4 遺伝子のDNA 配列と相同性の高いクローンを得た。unc-4 遺伝子は線虫のVA 運動神経細胞で発現し、この神経細胞の特異性の決定に関与していることが知られている。ショウジョウバエにおいても相同の機能を有している可能性を検討するため、このクローンについてcDNA library screening を行い解析を進めた。in situハイブリダイゼーション法により胚における発現パターンを解析したところ、stage 11で各体節の、最前列の表皮の細胞と中枢神経系の正中線に隣接する一部の神経細胞で発現が見られ、stage13 では中枢神経系のより外側の神経細胞でも発現が開始した。stage 16 になると、labial sensory organで発現が見られ、中枢神経系での発現は減弱することが観察された。抗engrailed 抗体との2重染色により、表皮での発現はengrailed 発現細胞に隣接した後列の細胞で発現し、中枢神経系では一部のショウジョウバエunc-4 相同遺伝子発現細胞は、engrailed 発現細胞と一致していることが明らかとなった。現在、この遺伝子の上流のゲノム断片とtau-lacZとの融合遺伝子をショウジョウバエに導入し、発現神経細胞の軸索の走行を観察すると同時に転写調節領域の同定を試みようと計画している。