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シナプスに局在するStill life蛋白質の機能解析

曽根雅紀1、星野幹雄1、鈴木えみ子2、黒田真也3、貝淵弘三3、中越英樹1、西郷薫4、鍋島陽一1、浜千尋1

(1: 国立精神神経センター・遺伝子工学、2: 東大・医科研、3: 奈良先端大、4: 東大・理・生化)


われわれは、成虫において活動性が著しく低下するstill life(sif)変異の原因遺伝子を単離し、その遺伝子産物がRho類似G蛋白質に対するGDP-GTP交換因子と高い相同性を持ち、シナプスに特異的に局在することを明らかにしてきた。特に、免疫電顕によって、SIF蛋白質は前シナプスの細胞質の細胞膜近傍の限定された領域に局在することがわかった。N端欠失SIF蛋白質は、ヒトのKB細胞において、アクチン繊維の重合を調節して細胞の形態を変化させる活性を示した。以上のことから、われわれはSIF蛋白質がアクチン繊維の重合調節を通してシナプスの形態変化および形態的可塑性を制御しているのではないかと考えている。この仮説を検証するために、われわれは現在sif変異のヌルアリルを単離して、その表現型を解析することを試みている。また、SIF蛋白質は、PHドメイン、PDZドメインなどの分子間相互作用に関わる機能モチーフを持っていることから、シナプスにおける細胞内シグナル伝達系の構成要素として、特に神経細胞の活動性や細胞外からのシグナルの下流で機能していることが期待される。この仮説を検証するために、われわれはまず、それぞれの機能ドメインがSIF蛋白質の機能の中でどのような役割を果たしているのかを、種々の欠失蛋白質を発現するトランスジェニック・フライの解析を通じて明らかにしようとしている。また、SIF蛋白質の機能発現の時期を調べるために、コンディショナルレスキュー実験を行っているので、その結果についても報告する。