P-77


筋−神経の特異的なシナプス形成に関与するLRRタンパク質CAPRICIOUSの解析

宍戸恵美子1、竹市雅俊1,2、能瀬聡直1

(1: 基礎生物学研究所・行動制御 2: 京大・理・生物物理)


キイロショウジョウバエ(D. melanogaster)幼虫の体壁の筋肉はhemisegmentあたり約30個の筋肉細胞から成り立っている。各々の筋肉細胞は特定の運動神経の支配を受ける。発生の途中で、筋−神経結合の特異性がどのように決まっているのだろうか。最近、Tollやconnectinなどの細胞接着分子やnetrinなどの分泌因子がこの過程に関与していることが示されている。capricious(caps)は、胚期に筋肉特異的な発現をするエンハンサー・トラップのスクリーニングから単離された遺伝子で、背部の4個の筋肉と、12番筋肉を含む腹部の筋肉、及びそれらを支配する運動神経の一部でレポーター遺伝子の発現がみられた。UAS-Gal4システムを用いてcapsを全ての筋肉で発現させたとき、及び、capsの欠損変異体では主に12番筋肉の筋−神経結合に異常がみられた。いずれの場合も、いったん12番筋肉にシナプスを形成した神経がさらに隣の筋肉にもシナプスを形成することが観察された。cDNAの塩基配列からcapsは細胞膜貫通型のロイシン・リッチ・リピート(LRR)タンパク質をコードすることが予想された。LRRはTollやconnectinの細胞外領域の大部分を占める約24アミノ酸のモチーフの繰り返し構造で、タンパク質−タンパク質間の相互作用に関わると考えられる。われわれはCAPSが12番筋肉とそれを支配する運動神経の細胞表面に限定して発現されることが筋肉特異的なシナプス形成に必要であると考えている。