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強制発現ベクターを用いた性特異的致死遺伝子のスクリーニング

大迫隆史 1、R. Nothiger2、相垣敏郎 1,3

(1: 都立大・理・生物、2: Zool. Inst., Univ. Zurich、3: 科技団・さきがけ)


 GAL4-UAS異所的発現システムを利用した新しいベクター(Gene Search vector)を用いて突然変異体を作成し、発生時期を通して全般的に発現するGAL4系統に交配し、性特異的致死を示す系統をスクリーニングした。現在までに、約700系統のスクリーニングを終えており、雄特異的致死を示す系統をいくつか得ている。このうち、雌の生存率への影響が少ない1系統(2035)について、遺伝学的・細胞学的解析を進めている。

 これまでに発見・解析されている雄特異的致死を示す突然変異は、いずれも遺伝子量補正に関与するmale-specific lethal (msl)遺伝子群の突然変異である。msl遺伝子群がコードするタンパクは、雄のX染色体上に複合体として結合し、クロマチン構造を変化させ、雄のX染色体上の遺伝子の発現量を2倍にすると考えられている。msl遺伝子群の1つに突然変異が生じると、複合体の結合は観察されない。2035のベクターは、第2染色体左腕25Bの領域に挿入していた。この領域には、既知のmsl遺伝子群は存在していない。また、anti-msl2抗体を用いて、雄のX染色体上への複合体タンパクの結合を調べたところ、結合が観察されたことから、少なくとも、msl遺伝子群の上流で働く遺伝子ではないことが示唆された。現在、性転換遺伝子transformerとの相互作用を調べるとともに、強制転写産物の塩基配列の決定を行っている。