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GAL4エンハンサートラップ法を用いた、キイロショウジョウバエの幼虫中枢神経系での遺伝子発現に雌雄差のある系統の探索

上山盛夫1、伊藤啓2、相垣敏郎1、布山喜章1、山元大輔2

(1: 都立大・理・生物、 2: 科技振・ERATO・山元行動進化プロジェクト)


 キイロショウジョウバエでは、当然ながら雌雄で生殖器が異なること、配偶行動が異なることなどから、雌雄の神経系での構造上の差があることが予測され、実際に確認されてきている。この神経系を構成する神経細胞は、幼虫期以後に神経幹細胞から産生されることがこれまでの研究によって分かっている。

 また、キイロショウジョウバエでは、GAL4エンハンサートラップ法と呼ばれる方法を用いて、遺伝子発現を時間的空間的量的に制御するゲノム中に存在する要素である「エンハンサー」の活性を、レポーター遺伝子の活性を調べることによって容易に検出できる。

 そこで、この方法を用いて神経細胞の増殖・分化が盛んな3齢幼虫中枢神経系において遺伝子発現に雌雄差の見られる系統の探索をおこなった。

 325系統のGAL4エンハンサートラップ系統をスクリーニングした結果、遺伝子発現に雌雄差が見られる系統があった。これらの系統すべてで交尾器・生殖器の制御をおこなう領域である腹部神経節の先端部において、ラベルされた神経幹細胞が雄では数個あり、雌ではほとんどない、という差があった。すでにDNA複製を検出する方法で、この領域の幹細胞の増殖パターンに雌雄差があることが報告されているが、本研究からこの雌雄の細胞増殖の差が、遺伝子の発現パターンにも反映されていることが分かった。