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キイロショウジョウバエの単為生殖系統gyn-F9の解析(II)

村松圭吾、布山喜章

(都立大・理・生物)


 キイロショウジョウバエgyn-F9系統の雌減数分裂では、雌性生殖核が精子核との融合によらない自律的な2倍体化を起こす。その結果、gyn-F9系統雌と野性型雄との交配では高頻度で3倍体の子供が生まれ、gyn-F9系統雌と雄不妊突然変異ms(3)K81雄との交配では雄親由来の遺伝子を全く持たない2倍体の子供が生まれる。後者の現象は、雌性生殖(gynogenesis)と呼ばれるもので、単為生殖の一形態にあたる。

 減数分裂を行い、かつ2倍体の子供を作る類の単為生殖では、減数分裂によって半数化した生殖核が2倍体性を回復する機構が不可欠である。過去に報告されたショウジョウバエの単為生殖では、減数分裂終了後の雌性前核の融合、または複製によって2倍体性を回復するものが多い。これまでの研究により、gyn-F9系統の雌性生殖核に見られる自律的2倍体化は、第一減数分裂の核分裂が抑制された結果であると推測されている。今回我々は、gyn-F9系統雌で見られる生殖核の自律的2倍体化について、その遺伝的機序の解明を目的として、雌減数分裂の細胞学的観察を行うとともに、他の減数分裂突然変異との相互作用を調べた。その結果について、これまでの遺伝学的データをまじえて報告する。