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雄減数分裂遺伝子mei-1223を用いた染色体対合機構に関する研究

平井和之、山本雅敏

(京都工繊大・繊維・応用生物)


 キイロショウジョウバエ雄の生殖細胞系列には、精原細胞での体細胞分裂と精母細胞での減数分裂の異なる細胞分裂機構が共存している。キイロショウジョウバエでは、減数第1分裂での相同染色体対合のほかに、精原細胞においてsomatic pairingとして知られている体細胞分裂での相同染色体の対合(性染色体を除く)が観察される。さらに雄では、減数第1分裂前期の各ステージが欠如していることから、体細胞分裂での対合が減数分裂での対合そのものではないかとも考えられている。常染色体の対合機構は体細胞分裂と減数分裂で共通しており、性染色体の対合のみが減数分裂に特異的である、という仮説が提唱されている。

 本研究では、体細胞分裂から減数分裂への移行のメカニズムを明らかにすることを目的に、雄特異的な減数分裂突然変異体mei-1223[m144]を用いて、減数分裂と体細胞分裂での相同染色体の対合を細胞学的に比較した。その結果、相同染色体対合の失敗が減数第1分裂で見られるにもかかわらず、精母細胞における体細胞分裂では常染色体は正常に対合していた。このことから常染色体の対合は、性染色体と同様に、体細胞分裂と減数分裂では異なった機構で制御されていることが示唆された。mei-1223の唾腺染色体と脳神経芽細胞におけるsomatic pairingについても調査したので、併せて報告する。