P-86


ショウジョウバエ初期胚に発現する新規核内セリン・スレオニンキナーゼDmnkの解析

大石勲1、杉山伸2、山村博平1、西田育巧2、南康博1

(1: 神戸大・医・一生化、2: 名大・理・生物)


発生過程においてタンパク質キナーゼは重要な役割を担っていると考えられる。これまでに我々はショウジョウバエの発生過程において重要な役割を担う新規タンパク質キナーゼの同定を発現の時期、部位特異性を指標として行ってきた。その結果、ショウジョウバエの初期胚発生過程において特徴的な発現様式を呈する新規セリン・スレオニンキナーゼ、Dmnk(Drosophila maternal nuclear kinase)遺伝子のクローニングに成功した。Dmnk転写産物は、初期胚前部における濃度勾配的かつ一過的な発現様式を呈し、さらに極細胞を含む後極領域に限局して発現が認められる。また、成熟雌の卵形成過程においても特徴的な発現様式が認められることから母性効果遺伝子である可能性が考えられた。塩基配列の解析からDmnk蛋白質は476アミノ酸からなる分子量約50kDaの新規セリン・スレオニンキナーゼと予想され、そのC末端には核移行シグナルが認められた。さらに抗Dmnk抗体を用いてDmnk蛋白質の詳細な発現解析を行った結果、興味深いことに核の胚表層への移動に伴いDmnk蛋白質は一過的な体細胞核での発現および極細胞核での発現が認められた。また、極細胞核での発現は原腸形成期においても観察された。これらのことからDmnkが核内において転写制御因子等をリン酸化しそれらの活性を制御することにより、細胞化さらには生殖細胞の形成過程に関与することが考えられる。現在、Dmnkの初期胚発生過程における機能解析並びに既存の各種変異体との関連について解析を行っているのでその結果も併せて報告する。