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嗅覚突然変異geko (gk)の発現とphenotype の関係

白岩 敬1、仁田坂英二1, 2、山崎常行1, 2

(1: 九大・医・分子生命、2: 九大・理・生物)


 geko[1] はエタノール誘因能について3000系統のP element 挿入系統をscreeningして得られた突然異体である。本来、野生型はエタノールによく誘引されるが、この系統は誘引される度合いが1/3度に下がっていることが観察されている。発現部位をlacZの染色にて調べた結果、幼虫の先端の嗅覚の器官であるAMC (anteno-maxillary complex)や、成虫の触覚の第二〜第三セグメントの間で発現してるのが明らかになっている。gkのtranscriptは、P-element の挿入のごく近傍に見つかっており、3つのexonを持っている。さらにcDNAは全長1356 bpであり、予想されるタンパクは206 A.A. であった。

 今回、この遺伝子の発現量の変化によって嗅覚応答がどのように変化するか報告する。gekoを完全に欠失した系統がX線照射によって作製されたが、いずれも致死であった。また、gk[1]のP-elementをexciseした系統のうち、excisionについてホモにならなかったものはこの領域に大きな欠失を持っていた。次に、gkのtransgeneをgk[+]の系統に形質転換したところ、その表現型はgk[-]のものと同じくエタノールに誘引されなかった。さらに、成虫において野生型とgk[1]についてgkの発現量を比較したところ、gk[1]の方がはるかに大きい発現が観られた。これらのことから、gkが無いと致死、適切ではない発現(量的、組織特異的)によって、このmutant phenotypeが得られると考えられる。